子供の頃正月や祭りの宴席で大人たちが、木の棒を手に隠して、面白い言葉で数当てをし、焼酎を楽しく飲みながら親睦を図っている光景がよく見られました。いまではあまり目にする機会は少なくなりましたが、南九州に古くから伝わる「なんこ遊び」です。
なんこは対戦する二人が向き合い、固い樫の木でつくられた10センチ程度のなんこ珠を3本後ろ手に隠して持ち、その何本かを右手に移して畳の上(なんこ盤)に突き出し、合計数を予想して言い、互いに手を開いて持っている本数を見せ合い、勝ち負けを決める遊びです。負けた方が、事前に盃に盛られた焼酎を飲むことになります。
地方によっては違いますが、数字の言い方がおもしろいことです。たとえば次のような言い方をします。
0本・・・・おてぱら。おいやらん(誰もいない)
1本・・・・天皇陛下(国の象徴で一人)。富士山(日本一の山)
2本・・・・げたんは(下駄の歯)。ふうふ。ふたご、じゃん
3本・・・・犬の小便(犬は片足を上げて3本てするから)。
げたんめ(下駄の穴)
4本・・・・かやんついて(蚊帳の吊り手)。
くいまんタイヤ(車)
5本・・・・かたて(指)。オリンピック(五輪の輪)
6本・・・・いっぺ。けねじゅ(家族全部)
などです。
また、相手が何本持っているかを当てる遊びもあり、ひとしこ(同じ)、あにょ(兄のことで1本多い)、おとっ(弟のことで1本少ない)などの言い方をします。
ところで「なんこ遊び」は、昔は祝宴の中では必ず見られた光景でしたが、今ではほとんど見かけなくなりました。その要因はいくつかあげられます。核家族化が進み、親戚、地域の人が一緒に集まる機会が少なくなっています。それに併せて、昔は家庭で行っていた祝い事を、レストランなどでする機会が増え、場所や時間的制約も受けることで、楽しい笑い声を気兼ねなく出すこともできなくなっています。又地域の伝統祭事も高齢化が進み、行事の後に必ずおこなっていた宴会も減ってきており、なんこ遊びを伝授することも難しくなっています。地域コミュニティの崩壊が、伝統的遊びにも影響しています。
今指宿地域の宿泊施設では、観光客になんこ遊びを楽しんでもらうという取り組みを行っています。宴席の最中に大広間でなんこ遊びを取り入れて宿泊客を喜ばせています。ルールは簡単ですので、すぐに宴席で実践できます。若者同士が不慣れな手つきでなんこ棒を出す姿は滑稽であり、仲間の笑いを誘います。次から次に選手が交代し、座は一変に盛り上がっていき、焼酎の量も増えていきます。又外国人に教えると、手のしぐさや数字の言い方に特に興味を示し、伝統的日本文化の遊び方をみずから体験し、お土産に道具を買って帰るとのことです。
ひところに比べると、焼酎のブームも去り需要が足踏みしている中で、なんこ遊びを定着させ焼酎の新たな楽しみ方を提供し、焼酎のファンを開拓して売り上げにつなげたい思いがあります。又、特産品の薩摩焼の一つである「黒じょか」に焼酎を入れ盃につぐという伝統的飲み方を教えることで、お土産としてセットで買ってもらうことにもつながります。
なんこは漢字では「南交」と書き、南方と交易が盛んであった薩摩藩が取引の祭、接待の一つとして活用した高尚な遊びと言われています。県外の方がみえた時、なんこ遊びを教えることで交流も深まり、思い出に残ります。
地域での祭事が減り、地域住民の寄り合う機会が少なくなり、ますます地域の伝統文化は忘れられていきます。また宿泊施設での宴席の後は、カラオケ遊びと変わっています。南九州の伝統的遊びである「なんこ遊び」を復活させ、焼酎文化の新たな復活を目指したいものです。
参考 焼酎文化の遊び〜なんこ

