鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光
大隅路は、「故郷」、「赤とんぼ」、「夕焼小焼」、「早春賦」などの文部省唱歌や童謡が似合う地域です。四季折々の美しい花が咲き乱れる田畑、太平洋の黒潮が押し寄せる荒々しい岬や白砂青松の美しい海岸、小鮒が泳ぐ清流など日本の原風景がいたる所に残っており、今回の旅先に選びました。垂水から国道220号、269号を経て大隅半島の最南端「佐多岬」に到着しました。太平洋の荒波が打ち寄せる岬の突端に立つ灯台は、錦江湾や南の島へ行き交う船舶の目印とし重要な役割を果たしています。展望台からは、種子島、屋久島、硫黄島、対岸の薩摩半島の開聞岳を望むことができ、東シナ海に沈む夕日は格別です。 国道を北上し
、内陸部に入ると「花瀬自然公園」があります。川の中に見渡すかぎり石の絨毯を敷き詰めたような景観は、流れる水から湧き上がるしぶきが白い花に見えることから、「花瀬」と名づけられたとのことです。桜の咲く頃の石畳は一段と美しく感じられます。かつて薩摩藩主「島津斉彬」が開いた茶会のお茶亭跡が、川の近くに残っています。「花瀬」から渓谷が美しい「船間」を抜けると、「岸良」の海岸に出ます。太平洋の荒波が打ち寄せてできた断崖や、歩くとサクサクと音のする白浜が青い海に映えて印象的です。
近くの畑
を通ると、老夫婦が仕事を休めにっこりと手を振ってくれました。田舎の良さは自然の美しさだけでなく、人の魅力をも残していることです。旅先で温かい人情にふれると心が和みます。 なだらかな坂道を走らせると、太平洋を見下ろす場所に「内之浦宇宙空間観測所」があり、ロケット発射のない時期は、施設の見学ができます。道を下ると内之浦の街です。秋には「えっがね祭り」が開催され、美味しい伊勢えびや新鮮な魚を求めて多くの観光客が訪れます。地元の漁師が営む食事処である「網元」では、地域の情報だけでなく周辺の観光地のパンフも置くな
どして、観光客をもてなしています。地域活性化に努力されている姿に頭が下がります。国見トンネルを抜けて旅の最終目的地「かのやばら園」を訪ねました。4000種、50000株のばらが咲き誇る西日本一の広大なバラ園であり、大隅地域の観光の核となる施設です。門倉園長のばらに対する熱い思いを聞く機会にも恵まれました。
ところで最近の旅は、体験・交流などのニューツーリズムへの関心が高まっており、グリーンツーリズム、エコツーリズムなど田舎の良さを活用した旅が求められています。昨年大隅地域で開催した「よかとこ博覧
会」には750名もの参加があり、地域の観光素材発掘に地元の多くの人々が参画してくれました。地域の人が地域の魅力を語り、「地域愛」を育てることが地域の活性化につながると思います。九州新幹線全線開業に向けて、鹿児島中央駅から鹿屋までの直通バスの運行も始まりました。アクセスに恵まれない大隅地域にとっては、利便性の確保が観光客誘致にはいちばん必要なことです。乗車率を高めて開業後も継続して運行していきたいものです。 今回巡った大隅半島は、1日のドライブコースです。美しく移ろう四季、豊かな自然、美味しい食事、そこに住む人々は旅人を温かく迎えます。郷愁を感じる大隅路をぜひ訪ねてみませんか。


















