2009年3月23日
農家民泊の受入をコーディネートしている「エコリンク」代表の下津公一郎氏の調査によると、21年度で南さつま地域には、5000人を超える民泊の予約が入っています。
ここ数年鹿児島でもグリーンツーリズムの受入の機運が高まってきました。現在関東、関西地区からの高校生、中学生が主体で、日程は1泊2日の滞在となっています。到着日の午後から農業体験を行い、夕食を全員で作り、翌日は午前中別メニューの農業体験を行い、昼食後農家に別れを告げて近隣の観光地に移動します。
受入家庭は初対面時には、大人顔負けのお化粧や学生に似つかわぬ髪の色や髪型に驚きを隠せないそうです。不安がよぎる中で受け入れますが、芋ほりや野菜の収穫作業などを体験するうちに、生徒たちは打ち解け、土の中から掘り起こす農産物の自然の姿に感動し、時間を忘れて農家の方と一緒に過ごします。
生まれて初めて畑の土に触れたり、落花生が木になっていると思っていた子もいたり、驚きの連続だそうです。夜の食事時間になると、自分たちが収穫した農産物を共同で料理し、食卓を囲みながら農家の皆さんと団欒し、時間が立つのも忘れて語り明かすことも多いとのことです。
都会の生徒にとって農家での生活は生まれて初めての体験でもあり、自然の恵みの偉大さに触れる機会となります。また農家の人々との語らいに親近感を覚え、都会の生活では味わえない温かい人の心と人間性に触れることで、子供がもつ本来の純朴さが表に出てきます。
わずか1泊2日の体験ですが、別れる時生徒たちは涙を流し抱き合って別れを惜しむと言います。24時間の農家での滞在がこれほどまでに生徒の心を動かすことに、受入農家の方々も共感を覚え最初の心配事を忘れて、また次の生徒たちを受け入れようという気持ちが高ぶってくると言っておられるそうです。生徒たちが農業に関心を持つ機会になるだけでなく、農家の人にとっても励みになります。グリーンツーリズムの体験は比較的農家の閑散期に実施されており、しかも経済的効果もあり、農業の置かれている状況を考えると、地域活性化の一つになると思います。
今農村は、後継者不足と高齢化が進み農業を断念する家が増加しています。限界集落が増え空き家が目立ち、田畑の荒廃も進んでいます。しかしここにきて農業の見直しの機運が高まってきました。外国産の食糧への農薬の混入、食の偽装など食への安全・安心が問われています。
また、世界的に食料危機が叫ばれる中で、日本の食糧の自給率は40%を割り込んでおり、食糧確保の議論も高まってきました。農業を続けていくためには、農家の安定的な食糧の供給と収入確保が無ければなりません。しかし生産農家は高齢化しており、若者が農業に従事するためには、魅力ある農業にしていかねばなりません。
今県ではグリーンツーリズムにおける民泊のガイドラインを作成しました。農家民泊の受入の手法や保健衛生上の問題点を指導することで、定着に向けた環境づくりに役立つと思います。今年から「こども農山漁村交流プロジェクト」がスタートします。全国の小学校5年生が、農山漁村で1週間程度の体験をすることになっています。農林水産省と総務省、文部科学省の3省が進める事業ですが、各地域での受入態勢の整備が急がれます。グリーンツーリズムの実践を通して子供たちの情操教育に役立ち、また、少しでも農家の活性化につながる事業になることを期待します。
2009年3月2日
鹿児島県観光プロデューサー 奈良迫 英光
曽於市は、鹿児島県の東部を形成する大隅半島の北部に位置し、東は志布志市、南は大崎町、鹿屋市、西は霧島市、北は都城市と接し、宮崎県との県境に位置しています。
北部は大淀川支流域に開け、都城盆地の一角をなし、南部は菱田川流域に広がる地域となっており、全体的に起伏の多い大地となっています。
財部町、末吉町、大隅町の旧3町が合併してできた市で、しかも広域に町が広がっており、住民相互の交流を促進しながら均衡ある発展をめざし、住民が安心して暮らしていける町をつくっていくことが重要な課題です。
今回、「曽於市の魅力を発見し、それをどのようにして観光や定住に結びつけるか」を考えるフォーラムが開催され、パネラーとして参加しました。県内で活躍している「みなみの風」の会員の交流会も同時に開催され、活発な意見が交わされました。
曽於市で現在お客が日常的に来ている場所としては、「道の駅すえよし」がありますが、その他の場所は充分に活用されていないと考えます。以下の観光資源の活かし方について考えてみたいと思います。
末吉にある「花房峡のキャンプ場」は、夏場を中心に学生の教育の場所として最適です。教育委員会等を通じてPRし、市内はもとより近郊の市町村の学校にも利用してもらう努力が必要です。また親子での昆虫の観察やキャンプ場としても喜ばれると思います。夏休みに講師を招いて体験教室などを開くのも利用価値を高めると思います。
「道の駅すえよし」は、10号線沿いで分かりやすい場所にあり、ここを拠点に曽於の食の情報発信基地としての機能を高めていかねばなりません。曽於市の食材だけを使った「食事の限定販売」、「豆腐やお味噌など調味料の曽於ブランド品の販売」、「季節ごとの食フェアの開催」などを行うことで、新規顧客の開拓と地域産品の販売拡大を図っていかねばなりません。現在提供している食事も充実しており、グリーンツーリズムで民宿体験する場合、農家の負担軽減の方策として、夕食場所として活用する方法もあります。
大隅にはかつて航空基地がありましたが、その存在はほとんど知られていません。それは八号原の大地の「芙蓉隊」と呼ばれる部隊で、終戦末期の沖縄戦に備えて作られた航空隊でした。滑走路は残っていませんが、当時の司令室や部隊の住んでいた壕が残されており、戦跡として後世にきちんと残すべき場所と感じました。芙蓉隊の数少ない生存者が、当時の訓練や出撃の秘話を話してくれました。この基地を始め、県内にある戦跡をまとめた資料を作り、平和学習の素材として活用すべきと思った次第です。
また、大隅には県の肉用牛改良研究所があります。ここではバイオテクノロジー等の先端技術を駆使して肉用牛改良を促進し、産肉能力に優れた種畜生産を行い「鹿児島黒牛」の銘柄向上を図っています。予約すれば施設内の見学もできます。高級牛のルーツは大隅にあり、地域で美味しい牛肉を食べる施設や販売店があることが、観光客がその地域に選ぶ要素に繋がります。
鹿児島県を代表する祭りである「や五郎どん祭り」は、地域内の祭りに終わっており、隣接の市町村を中心に、もっと集客態勢を強めることが大切です。
財部は、JRの駅が三カ所有り、しかも鹿児島空港から1時間30分、高速道路にも近く、観光客誘致のアクセスに恵まれた町です。大川原峡に隣接した「悠久の森」は起伏が少なく、ウオーキングや自然観察に最適な場所です。インタープリターを同行した森林浴も魅力です。「桐原の滝」や「溝の口洞窟」も近くにあり、歩きながら自然を満喫できます。
また、財部は、甌穴で有名な「関之尾の滝」のある都城市と隣接し、広域で観光客誘致に努めることが大事です。春と秋の自然が美しい時期に、JRの駅を活用し周辺の景勝地を回る2日間のウオーキング大会を開くことで、宿泊にもつながり地域の活性化になると考えます。
曽於市全体としていえることは、豊かな田園地帯に恵まれ、食材も豊富であり、これを活用したグリーンツーリズムの推進が不可欠です。学生団体を中心に、農業体験や民泊を導入するには好条件が揃っています。夕食は「道の駅」を活用し、入浴は温泉センターの利用で農家の負担が軽減できます。グリーンツーリズムの推進に当たっては、地域をコーディネートする人の役割が重要であり、学校と農家との諸問題をスムーズに問題解決していくことが定着につながります。本年度から「子ども農山漁村交流プロジェクト」がスタートします。その受け皿づくりのためにも導入が急がれます。
2点目は、広域連携の推進です。観光客は地域内で完結することは少なく、広域に回ります。霧島市や鹿児島市、都城市は購買人口が大きく、また温泉や宿泊施設もあり、観光客も多く訪れています。そこの客を曽於市に誘導するためには、宿泊機関に出向いて曽於市の季節ごとのパンフを常備し、定期的なセールスを展開して自ら集客する態勢づくりが必要です。イベントや地域の祭りの集客には、ふるさと出身が多い鹿児島市をターゲットにすることも一つの方策です。
九州新幹線全線開業まで、2年となりました。地域に新幹線効果をもたらすためには、他の地域との差別化が必要です。曽於市は徹底的に田舎にこだわるべきと考えます。
少子高齢化が進み、人口減少が地域の活力低下に拍車をかけています。魅力ある農村地帯に多くの人を呼び、農業体験や地域産物の購入が増えることで曽於市ファンづくりができます。そのためには「曽於田舎ツーリズム」の定着が一番と考えます。曽於地域の発展を期待してやみません。